<< 前のページ次のページ >>

院長・川村正英の


頸椎における神経障害 2015年8月4日

 頸椎の脊柱管は脊髄という大きい神経を通し、そこから神経の枝が分かれて手の方に向かって行きます。この部位でヘルニアや加齢変化の骨変形により神経が圧迫された場合、手足や体幹にしびれ、痛み、筋力低下といった神経症状を呈することになります。
 神経の枝が圧迫を受けると肩から腕、手にかけての上肢に症状を来し、肩周囲の痛みを来した方は五十肩ではないかと受診される場合があります。肩の筋力低下で腕の挙上が困難となった患者さんは肩腱板断裂と紛らわしい場合があり、手のしびれは手根管症候群や肘部管症候群などの末梢神経障害との鑑別を要します。通常、薬物療法やリハビリなどの保存的治療を行いますが、筋力低下が軽度でない場合は手術を要すこともあります。
 一方、脊髄本幹が圧迫されると上肢の症状とともに体幹や下肢にも神経症状を来す場合があります。上肢では筋力低下以外に手の細かい動作がしにくくなり、箸が使いにくくなったり、ボタン留めがしにくくなったりします。下肢では歩行が困難となり、階段で手すりが必要になり、さらには足がもつれて歩行不能になるケースもあります。また、脊髄の障害が重度になると膀胱や直腸の機能も障害され、これらの症状が出てくると手術が必要になることが多いです。
 脊髄本幹にしても枝にしても、神経はいったん障害を受けると回復のよい組織ではありませんので、とことん悪化する前の段階で手術を考慮する必要があります。頸部の痛みや凝りとともに手足や体幹のしびれ、痛み、筋力低下がある患者さんは頸椎での神経障害かもしれませんので、整形外科受診をお勧めします。
 
<< 前のページ次のページ >>
 
← 一覧に戻る