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ギックリ腰と高齢者の急性腰痛 2004年1月8日

 「ギックリ腰になった」という話をよく聞きますが、ギックリ腰とは一体どういう状態でしょうか?整形外科の教科書をめくってみてもギックリ腰という病名はありません。
  一般的に、不自然な姿勢や不用意な動作で生じた急性、突発性の腰痛を総称してギックリ腰と呼んでいるようです。この急性腰痛発作の原因となる部位は、腰椎の椎間板、椎間関節、靱帯や腰部の筋、筋膜などが挙げられます。腰痛が起こった直後で、その原因を明確にできない場合にやむを得ずギックリ腰というのであり、急性腰痛症という診断名とほぼ同義であると考えられます。私の経験では、急に起こった腰痛の最も多い原因は、腰椎椎間板ヘルニアであるように思います。急性の腰痛が起こった直後には安静を守るのが原則で、内服薬や注射、コルセットの着用も有効です。温熱や牽引などの物理療法は急性期が過ぎてからの方がよいでしょう。
  また、注意すべきは高齢者に起こった急性の腰痛です。これは通常のギックリ腰とは異なり、骨粗しょう症が原因の脊椎圧迫骨折が生じていることが少なくありません。転倒したり、しりもちをついたりして起こることが多いのですが、骨粗しょう症が強いと日常の何気ない動作で圧迫骨折を起こすことがあります。この場合、急性期の安静が一段と重要で、病初期に運動をしたり、腰部への徒手療法などを受けたりすると、かえって腰痛が悪化する場合もあります。一方、長期間安静に寝続けると高齢者の場合はさまざまな合併症を来しますので、安静と運動は適切に行わなければなりません。やはり、急激な腰痛を来した時は整形外科専門医を受診した方がよいでしょう。


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