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関節腔内注射を受けるときの注意点 2012年6月4日

 膝の変形性関節症やリウマチ、五十肩などで一定の期間、膝や肩に関節腔内注射を受ける人も多いのではないでしょうか。その際によく使用する薬剤はヒアルロン酸ですが、時には炎症を抑える目的でステロイドホルモンを使うこともあります。関節腔内注射は関節疾患に対する有効な治療法ですが、薬や注射には副作用や合併症が付きもので、関節腔内注射の重大な合併症としては感染が挙げられます。これはつまり注射をすることにより関節が化膿してしまうことです。関節内は血流の乏しい閉鎖腔となっており、人体の中で最も細菌感染に弱い部位の一つです。関節腔内注射による感染はめったにない合併症ですが皆無とは言えず、ひとたび感染が生じると深刻な事態に陥ります。注射で使用する薬液、注射器や針は無菌状態になっていますが、空気中の落下細菌や皮膚の細菌などからの感染があり得ます。皮膚も十分に消毒してから注射しますが、その皮膚のもともとの状態が清潔でないといくら消毒しても細菌が残存する場合があります。例えば何日も入浴せずにあかがたまっている場合や、直前まで湿布を貼って注射部位が粘ついたような状態、あるいは、湿疹でただれた状態などが挙げられます。注射による感染の心配を減らすためには、注射の前夜には入浴時に患部を十分にきれいにして、その後は湿布や塗り薬を注射部位には使わないようにした方がよいでしょう。注射後も針痕から細菌が侵入しないように清潔に保つ必要があり、当日は入浴で注射部位をお湯に漬けないようにした方が無難だと思います。糖尿病や人工透析中の患者さん、ステロイドホルモン内服中の患者さんは感染に対する抵抗力が弱い状態にありますので、一層の注意が必要です。医療者側はもちろん細心の注意を払うべきですが、患者さんも注射部位をきれいに保つようにしてください。
 
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