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整形外科疾患に対するエックス線検査 2011年10月3日

 エックス線は放射線を利用した検査ですが、整形外科では腰、膝やけがをした部位をエックス線で撮影して状態を評価します。ところが、福島の原発事故以来、エックス線を撮ると身体に害が起こらないか心配であるという患者さんが少なくありません。
  放射線は自然界にも存在し、大地や宇宙からの放射線でわれわれは被ばくしていますし、よく飛行機に乗る人は地上の数倍の宇宙線を浴びることが知られています。報告にばらつきはあるものの、腰椎のエックス線では1・5mSv(_シーベルト)の被ばくがあるといわれています。一度に全身が500mSv被ばくすると白血球が一時的に減少し、1千mSv被ばくすると倦怠感や吐き気が起こり、7千mSv被ばくすると死亡すると報告されています。また、白血病やがんになる放射線量は、一度に1千mSvを超える量といわれています。このように健康に被害を及ぼす放射線量と比べるとエックス線検査で被ばくする量は非常に少量ではあります。
 磁気共鳴画像装置(MRI)は放射線の出ない検査で、エックス線で写らない軟骨や神経なども見えますので非常に有用ですが、エックス線がMRIに比べて優れた点もあります。MRIが寝た状態で撮影するのに対してエックス線は立位での患部の状態を知ることができます。例えば立つと腰の曲がりが強くなったり、膝の変形が増悪したりするようなケースです。頸椎では首を前後に動かして不安定性を見ることもできます。また、MRIが撮影にある程度の時間を要するのに対してエックス線では1回の撮影は一瞬で済みます。痛みのために長時間同一姿勢を保つことができない人でもエックス線なら撮れます。
  撮影回数も必要最低限にして不要な被ばくは避けるべきですが、整形外科疾患の診断にエックス線は今のところ欠かせない検査です。
 
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