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腰や膝の手術はしたらいかん? 2009年5月2日

 整形外科疾患の治療について説明をしていると、「手術はしたらいかんと言われた」とおっしゃる患者さんを時々経験します。知り合いや親類が経過不良例を見聞きして、そのようなアドバイスをしてくれたとのことです。身近な人の意見は印象が強いことと思いますが、治療法を決める際はよく考えてみる必要があります。
 例えば、「腰の手術をすると歩けなくなって車いすになるので手術をしたらいかん」という意見を聞くことがあります。全くそういうケースがないとは言えませんが、まれな結果であり、逆に放置すればまひのため足の筋力が低下して歩行が困難になる場合も少なくありません。また、「膝の人工関節をして歩けなくなった人がいるので膝の手術はせられん」という人もいます。膝は人工関節の中でも安定した成績が得られており、多くの人において術前に比べ痛みや歩行が改善します。しかし、手術がうまくいっても若い時の膝に戻れるわけではありませんので、走ったり、重労働ができたりする膝にはなりません。従って術前の痛みや機能障害が軽度の人が手術を受けると満足できない場合もあるかもしれません。
  整形外科では各疾患の治療について標準的な考えが確立されてきています。手術治療では合併症が全く起こり得ないということは言えませんので手術をしないで治るに越したことはありませんが、重症例ではどうしても手術が必要になるケースもあります。術前の状態も患者さんによりさまざまですので一概に手術はしないと決め付けず、かかりつけ医や手術を行う病院での意見もよく聞いて治療方法を決めた方が良いと思います。

 
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